現在のコードレス機器の通信の主流は、Bluetoothだと思われますが、便利なBluetoothといえど無線(コードレス)であることには変わりありません。
有線と違い、コードレスであるということは、少なからず、音ズレ、遅延が発生する可能性があるということです。
ワイヤレスイヤホンで音楽を聴く場合は、遅延があっても特に問題ありません。しかし動画を観る時にワイヤレスイヤホンを使う際は、映像と音声にズレが発生する場合があります。
いわゆる音ズレ、遅延という現象です。みなさんも聞いたことがあると思います。
具体的に説明すると、ドラマで、主人公がしゃべっている映像で、口の動きと音声がズレていることです。ひどい音ズレになると、主人公が、しゃべり終わって口を閉じていても音声だけが、遅れて聞こえることもあります。これってかなり気になりますよね。
恐らく、実際に経験したことのある方もいらっしゃると思います。
音ズレ、遅延は、ワイヤレス(無線)の宿命のようなものですが、少しでも音ズレ、遅延の少ないBluetoothのイヤホンはないものでしょうか?
今回の記事では、音ズレ、遅延の少ないおすすめのBluetoothのイヤホンについて紹介します!
そしてタイトル通り、aptxコーデック対応のBluetoothイヤホンで、問題なく動画を観ることができるのか?を実際に試してみました。
補足事項!
この記事で紹介しているワイヤレスイヤホン「Anker Soundcore Life P2」は、すでに完売しているようです。そのため、第三章の
で、aptxに対応した他のワイヤレスイヤホンも紹介しています。
目次
音ズレ、遅延の少ないBluetoothイヤホンの条件とは?
音ズレ、遅延が少ない条件は、いくつかありますが、その中でも重要なのは、Bluetoothイヤホンが対応しているコーデックです!
※Bluetoothのバージョンも5.0以上をおすすめします。
コーデックとは、簡単に言えば、データの圧縮技術です。
Bluetoothのイヤホンを使う際に現在、使用されている主なコーデックには、以下のものがあります。
※もちろん、他にもコーデックはありますが、実用性、Bluetoothイヤホンのコストパフォーマンス等を考えて以下のものに絞りました。
●SBC
基本的に、どのBluetoothイヤホンでも対応している、いわば標準のコーデックです。音声の遅延に関しては、やや大きい傾向があります。
●AAC
iPhoneで使用されることが多いコーデックでSBCに比べると音質がよく、遅延も比較的少ないです。
●aptx
上の2つを含めた3つのコーデックの中では、一番、遅延が少ないといわれているコーデックです。aptxには、主に4つの種類があります。
以下の4種類です
aptx
遅延が少なく音質もよく、aptxの基本となるタイプです。
aptx HD
非常に高音質。音楽を高音質で楽しみたい人に適したタイプ。ただし、aptxの中では一番遅延が大きいとされています。それでもSBCに比べればかなり低遅延。
aptx ll
音質は、aptx HDにやや劣るが、この中では、一番低遅延を実現したコーデックで動画を観たり、ゲームをするのに適している。
aptX Adaptive
aptxの最新のコーデック。音質はaptx llよりいいが、遅延に関しては、aptx HDよりは遅延が少ないが、aptx llにはやや劣る。
主なコーデックのおよその遅延(秒数)をまとめて表にしてみました!
コーデック | 遅延に関して | 備考 |
SBC | 約0.22秒±0.05秒 | ほぼすべてのデバイスで使用できる標準タイプ |
AAC | 約0.12秒±0.03秒 | iPhoneで多く使われています。 |
aptx | 約0.07秒±0.01秒 | aptxの基本となるタイプ |
aptx HD | aptxよりやや遅延が大きい | 非常に高音質 |
aptx ll | 約0.04秒未満 | 最も低遅延なコーデック。音質は、aptxと同程度 |
aptx Adaptive | aptxと同程度 | 低遅延で高音質とバランスがよい |
こうしてみるとやはり「aptx ll」の低遅延の性能が圧倒的な感じがします!
そのため、私の個人的なおすすめは以下のようになります!
●値段が安くて遅延が少ない製品が欲しいならスタンダードな「aptx」対応製品
※aptxで実際にドラマや映画を快適に観ることができるのか?については下の章で実際に検証しています。
●高音質で音楽を楽しみたいなら「aptx HD」対応製品
※かなり高音質ですが、その分、他のaptxに比べるとやや遅延が大きくなります。
●ドラマや映画などの動画、ゲームを楽しみたいなら最も低遅延な「aptx ll」対応製品
※ただし、全く遅延がないわけではないので音ゲーなどには向かない可能性があります。
●低遅延で高音質がいいなら「aptX Adaptive」対応製品
※低遅延で高音質とバランスがとれています。
遅延に関して「ms」ミリ秒で表示している場合があります。
これを秒単位に置き換えると、例えば、SBCコーデックだと約0.22秒の遅延があるとされていますが、0.22秒=220msとなります。つまり0.1秒=100msです。
さらに補足すると、遅延が0.1秒を超えると映像と音声の音ズレに気が付きやすいという意見が多いような気がします。
Anker Soundcore Life P2で本当にaptxは遅延(音ズレ)が少ないかを動画を視聴して試してみた
補足事項!
この記事で紹介しているワイヤレスイヤホン「Anker Soundcore Life P2」は、すでに完売しているようです。そのため、第三章の
で、aptxに対応した他のワイヤレスイヤホンも紹介しています。
記事に戻ります
aptxに非常に興味を持ち、実際にaptxコーデック対応のBluetoothイヤホンで動画を観ると遅延(音ズレ)は、許容範囲なのか?気にならないのか?を実際に試してみました。
今回、試してみたのは、aptxの中で基本となる標準タイプの「aptx」です。
本当ならば、最も低遅延な「aptx ll」、もしくは、高音質でaptxと同程度、低遅延な「aptx Adaptive」対応のBluetoothイヤホンを購入して試したかったのですが、数が少ないのと値段が高く予算がなかったため「aptx」対応のBluetoothイヤホンを購入しました。
結果的に、aptxで、動画鑑賞にも耐えうる低遅延であれば、コストパフォーマンス的に私的には、満足ですし、また、aptx llの場合、さらに低遅延のため、aptxの性能の判断基準になってよかったと思っています。
今回用意したもの
●ノートパソコン:
約8年前のもので、OSは、Windows 10、CPUは、第三世代のCore i7、メモリ8GB、グラフィックボードなし(内蔵GPU)、DVD、Blu-rayドライブ搭載、Bluetooth非搭載
●Bluetoothアダプタ:
ノートパソコンにBluetoothが搭載されていないため、「TP-Link Bluetooth UB500」を購入しました。Bluetooth5.0に対応していて、プロファイルではA2DPに対応しています。USBポートに差し込むタイプです。
●Bluetoothイヤホン:
購入した製品は、コストパフォーマンスがよい「Anker Soundcore Life P2」です。対応コーデックは、aptxです。
最初に購入した製品がaptxの性能を本当に発揮できているかを調べました
aptxの遅延は、約0.07秒±0.01秒とされていますが、本当に今回の環境下でその性能が発揮できているかを確認しました。
確認するために、ユーチューブの遅延テスト動画を使わせていただきました。ユーチューブの検索欄に「遅延テスト」と入力すると出てきます。
私が、今回利用した遅延計測ツールは、
【60fps改良版】遅延計測ツール 1分 Bluetoothヘッドホン・イヤホン キャプチャーボード モニターの音ズレ確認に使えます
という動画です。
メトロノームの外観に似ています。真ん中の赤いメモリ(線)に止まると±0秒です。
左右両方に、それぞれ片側に4つのメモリ(線)があり片側(左半分、右半分)で1秒です。つまり、左端から右端まで移動すると2秒です。
すると単純に1秒を4で割った、1メモリ0.25秒かと思ったのですが、実際にメモリ(線)に止めて確認すると違いました。
実際に調べてみると、赤いメモリ(線)の左右にある一番近い黒いメモリ(線)が誤差0.1秒のようです。そして2番目のメモリもほぼ0.1秒、3番目のメモリは、約0.15秒、そして4番目のメモリは、約0.25秒だと思います。
つまり片側の4つのメモリ(線)を合わせると1秒ではなく0.6秒になると思われます。
実際は、片側で0.60秒なのですが、恐らく、わかりやすくするため、0.60秒以降はリセットされて1秒になるのではないでしょうか。
※本当の時計は、0.60秒以降もあり、0.99秒の次に1秒になりますが、あえて遅延計測ツールとして、わかりやすくするために、0.60秒でリセット、つまり片側で、0.6秒を超えると次は、0.7秒ではなく、1秒になるようにしているのではないかと思われます。
あくまで私の推測です間違っていたらすみません。
実際に計測してみると
計測してみた結果は、約0.08秒でした。
※標準スピードだと速いため動画の設定で再生速度を0.25秒にして計測を行いました
しかし音を聞いてからPCのエンターキーを押すために、どうしても実際よりも結果が悪く(遅く)なってしまいます。
具体的には、音を聞く→エンターキーを押す。この間にどうしても時間が経過してしまい測定結果が実際よりも遅くなります。
そこで連続してエンターキーを押した場合、どのくらいのタイムラグがあるのか調べると、0.02秒でした。つまり連続してエンターキーの連打を続けても、1回目は、0.02秒、2回目は、0.04秒になるということです。
そこでこのタイムラグの0.02秒を差し引いて考えると、
遅延計測の結果は、約0.06秒前後だと思われます。
aptxの遅延速度は、約0.07秒±0.01秒とされていますので、aptxの性能を充分に発揮していると思います。
試しに、PCのエンターキーを連打し続けて、ちょうど音と重なるまで試してみると、上記とほぼ同じ結果になりました。
では、次の章では、実際に動画を観て、この遅延0.06秒が、動画を鑑賞するにあたってどれほど違和感があるものなのか?視聴に影響があるのか?の検証結果をお伝えします。
aptx対応のBluetoothイヤホンで色々な動画を視聴して遅延0.06秒が動画鑑賞にどれほど影響があるのかを調べてみた
では、実際にaptx対応のBluetoothイヤホンは、動画鑑賞に堪えうるか?問題ないか?を試してみました。
具体的には、映像(ドラマ、映画など)でどれくらいの遅延が起きるか?違和感があるのか?
特にチェックしたシーンは、「会話」「手を叩く」「ドアを閉める」「テーブルにグラスなどを置く」際に発生する音がズレていないかです。特に「手を叩く」シーンでは、若干の遅延でも、遅延があると音のズレにすぐ気が付きます。
●有料動画配信サービスの動画
ネット配信の有料動画を観てみましたが、上記のシーンでは、いずれも音ズレ(遅延)は、感じられなかったです。
●ユーチューブの動画
こちらも同様に、上記のシーンでは、いずれも音ズレ(遅延)は、感じられなかったです。
●ブルーレイ、DVDディスクの動画
こちらも同様に、上記のシーンでは、いずれも音ズレ(遅延)は、感じられなかったです。
具体的に説明すると
映像の中の人が手を叩いた瞬間に、ほぼドンピシャリのタイミングで、Bluetoothイヤホンから手を叩く音が聞こえました。
音がズレている、遅延している感じは、ありませんでした。
また会話している口元を観てもピッタリとタイミングが合っていました。
一時停止を使用した直後は、音ズレ、遅延が発生する場合があります
私は最初、動画で、音ズレ、遅延チェックを何度も行っていたのですが、巻き戻したり、一時停止を多用すると再び再生した直後には、多少音ズレが発生する場合がありました。
これは、一時停止から再び再生が始まるまでのタイムラグのようなものだと思います。
しかし、その後、動画が進むとすぐに元に戻るはずです。普通に再生していれば、問題なく音ズレ、遅延が気にならずに私の環境下では、動画を鑑賞できました。
正確には、約0.07秒、音が遅れて耳に届いてるのですが、そのくらいの遅延だと気が付かない、違和感がないということなのだと思います。
素直に、aptxってすごいコーデックだなと感動しました!
ただし、実は、ひどく音ズレ(遅延)した動画もいくつかありました。
それは、先程調べた有料動画配信サービス、ブルーレイ、DVDディスクの映像ではありません。
昔、自分でデジカメで撮影したものの、動画の容量が大きすぎるため圧縮編集したMP4動画です。
これに関しては、すべてではありませんが、一部の動画で、不思議にひどい音ズレ(遅延)が発生しました。恐らく圧縮する際のエンコードの仕方が影響しているのではないでしょうか?
しかし、不思議なことに、PCのスピーカーや有線のイヤホンで、その動画を観ると全く音ズレ(遅延)がありません。
原因は、正直、今でもわかりません。
結論を言えば、有料で配信されている動画、有料のブルーレイ、DVDディスクの動画、テレビでドラマを録画してブルーレイに書き込みした場合も、動画視聴に影響するような音ズレ(遅延)は、感じられませんでした。
※あくまで私の個人的な感想です。ただ、あえて言うなら、私が試した環境下では、音ズレ自体が発生していないと思えるほど、ストレスなく動画を鑑賞することができました。
aptxで、これだけ低遅延なのですから、aptx llの場合、さらに低遅延ということになります。aptxコーデックは、すごい技術ですね!
他にもあるaptx対応のワイヤレスイヤホン
Anker Soundcore Life P2は、どうやら私が購入した後に、完売したようです。
今までは、なかなかaptxに対応したワイヤレスイヤホンが販売されていなかったのですが、私が知らないうちに、何点か販売されていました。
Apt-Xに対応!
[Amazon.co.jp限定] Jabra Elite 3 ネイビー ワイヤレスイヤホン bluetooth [国内正規品] Apt-X IP55 100-91410001-40
aptX Adaptive に対応
(遅延に関しては、aptXと同じ性能で音質がいいのが特徴です)
ゼンハイザー Sennheiser ワイヤレスイヤホン bluetooth CX Plus True Wireless ブラック aptX Adaptive
aptX Adaptive に対応
(遅延に関しては、aptXと同じ性能で音質がいいのが特徴です)
オーディオテクニカ ATH-CKS50TW BK ワイヤレスイヤホン bluetooth / 低遅延モード/ aptX adaptive / ブラック ATH-CKS50TW BK
私が、ワイヤレスイヤホンを探したときは、aptxに対応した製品を探すのに、かなり苦労しましたが、現在は、探せば、何点か出てくるようになりました。
私も現在使用しているワイヤレスホンが壊れたらまた、aptx対応製品を購入したいと思います。
やはり、遅延があるとガッカリしてしまいますよね。
その点、aptx、aptX Adaptive、aptx llは、すごい技術だと改めて思いました。
aptxに対応したBluetoothイヤホンを使用しても遅延が大きい際に考えられる主な原因
低遅延であるaptxコーデック対応のBluetoothイヤホンを使用しても音ズレや遅延が大きい場合もあります。
この場合の大きな遅延とは、aptxの基本性能である遅延、約0.07秒±0.01秒を大きく上回ってしまうことです。
結論から言うと、原因は、aptx対応のBluetoothイヤホンではないことがほとんどです。
まず認識しておくことは、送信と受信についてです。
Bluetooth接続の場合において!
Bluetoothイヤホンは、受信側。
PCやスマートフォンなど音声を発信しているデバイスが送信側になります。
以下にaptx対応のBluetoothイヤホンを使っても音ズレ、遅延が出る主な原因をまとめてみました。
考えられる原因は、探せばたくさんあると思いますが、主なものだけを簡単にまとめてみました。
●送信側と受信側のどちらかがaptxに対応していない
BluetoothイヤホンとPCをBluetoothで接続した場合を例にします。
Bluetoothイヤホン、PC、両方のデバイスがaptxに対応していないと違うコーデックに変更されて通信されてしまいます。この場合、通信に使われるコーデックが、最も一般的なSBCコーデックに変更されるとかなり遅延が起きます。
そのため、Bluetoothイヤホンの方が、aptxに対応していても、PC側などが、対応していない可能性があります。
これを確かめるのは、なかなか面倒です。知識のある方は、「Bluetoothイヤホン 接続 コーデック 確認」または、「Bluetoothイヤホン 接続 コーデック 変更方法」などで調べると出てくるかもしれません。
おおざっぱに判断する基準としては、先程紹介したユーチューブの「遅延テスト動画」で、どのくらいの遅延があるかを計測してみて、SBC、AACの遅延(秒数)とかなり一致する場合は、そちらのコーデックで通信されている可能性があります。
●送信側と受信側のBluetoothのバージョンが一致していない。
例えば、新しくBluetooth5.0対応のBluetoothイヤホンを購入したとします。しかしBluetooth接続するPC側のBluetoothのバージョンが4.0だった場合、互換性はありますが、Bluetooth4.0の通信性能しか発揮できません。可能性は低いと思いますが、それがひょっとすると遅延の拡大につながっているのかもしれません。
●送信側のデバイスから離れすぎている。もしくは通信に干渉するものがある。
これは可能性としては低いと思いますが、送信側と受信側が離れすぎていないでしょうか?現在、多く販売されているBluetoothイヤホンの最大通信距離は、「Class2」で、だいたい10mです。それ以上離れたり、送信側との間に障害物がある場合は、不具合が発生する場合があります。
●Bluetoothイヤホンが、実は、aptxに対応していなかった?
すべてではありませんが、ノーブランド品の一部では、Bluetoothイヤホンの場合、商品説明ページにはっきりと、aptxに対応していると記載されていない場合もあるかもしれません。また、可能性は、低いと思いますが、商品紹介ページなどに「低遅延」と記載されていたため、aptxに対応していると思い込んでしまった場合もあるかもしれません。
購入したBluetoothイヤホンが実際にはaptxに対応していない場合は、当然aptxコーデックの性能は発揮されませんのでやや大きな遅延が起きる場合があります。
遅延がどうしても気になるときの対策方法
この方法は、PCで利用する際に限定されます。
実は、動画再生ソフトには遅延を補正する機能が標準で搭載されているソフトがあります。
VLCメディアプレイヤー、POTプレイヤー、MPC-HC、MPC-BEなどの動画再生ソフトには、その機能が付いています。
※いずれもこの記事を書いている時点ではフリーソフトです。
やや面倒ですが、上記の動画再生ソフトで設定を変更して音ズレ、遅延を少なくするという方法があります。
ただし動画再生ソフトを使った方法ですので、ネット上の動画鑑賞には基本的に使用できません。